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嘘色エゴイズム。
薄汚れた世界の真ん中で、眩い過去を想っていた。
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さらさらと流れる、清らかな川。
鉛筆で書き殴ったような、茫漠とした世界で
ただただ、水の流れる音だけがさらさらと聞こえる。

ここはどこだろう。
遠い昔、光に包まれてから、
ずいぶん長い間、目をつぶっていた気がする。

雑然としていた世界のなかで
ただひたすらに終わりを、絶望を願っていた記憶。
みっともないくらいにあがいて、もがいて、苦しんで、
だけどある日とつぜん、許された。
もういいんだよ、と。
溢れる光のなかで、溶けるように、あたしは終わりを迎えた。

それからは呼吸を続けてきた。
きちんと眠り、きちんと働き、きちんと食べてきた。
もしそれが生きることであるならば、
あたしはまちがいなく「生きて」きた。

だけどあるとき、「それ」は再びやってきた。
今度は、深い深い海の底。
光がやっと届くような暗いなかで、
生ぬるい水に包まれていた。
あたしがはきだした呼吸が、
一粒、また一粒と
はるかかなた頭上の水面にあがっていくのを見ていた。
キラキラと輝きながら、あたしの手の届かないところへと
あたしから離れていくのを、ずっとみつめていた。

はじまりも、おわりもなかった。
だけど、あがくこともしないまま、
生ぬるい心地よさにつつまれて、
ただただ、見えない空を見上げていた。

そして、やってきたのがここだった。
さらさらと流れる川に足を浸らせて、
心地よい冷たさを感じながら、
眠るでもなく、悲しむでもなく、
ただ水のゆく先を眺めていた。

向こう岸にあなたがいるのかしら。
いきづまった世界の向こうに
遠い昔においていったあなたのかけらたちがいるのかしら。
この川を渡ることは出来ないけど、
あたしはもう岸には、いない。

このまま流されてしまおうかしら。
いいえ、それとも引き返そうかしら。
向こう岸にいくつもりはないから、
ここに立っているのがちょうどいい。

ここにいれば、
涙も何事もなかったように流れていく。
思い出も、記憶も、大切にしていたあらゆるものたちも、
全て洗い流してくれる。


そうしてひとりになったら、
うん、ここでもう一度目を閉じよう。
その先のことは、だれもしらない。
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