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歯痒さが私をしめつけた。
愛おしさが鎖になって、 喉を締め付けていく。 どうして。 こんな醜いものを欲しがるの。 夜明けの気配が世界に漂う頃、 また昨日泣いて寝てしまった事を思い出して目が醒める。 (もしくは、夢の中でも泣いていたのかもしれない) 眠りについた時に触れていたはずの温もりが 背中を向けて此処とは全く違う世界にいるのを感じて、 苦しくなった。 近いのに、触れられない。 触れたって、何の意味もない。 そう思ったら昨日泣いてた理由も思い出せないのに、 またあの言いようのない切なさに胸がしめつけられた。 人なんて、好きにならないって、決めたのに。 繰り返し続けた過ちに終止符を打とう、って決めたのに。 どうしてまた、こんな綺麗な建前を持った愛に溺れてしまったんだろう。 好きになったのが先か、好かれたのが先か。 欠片も、信じてなんかいない。 この人の事、信用なんて全然抱いてないのに。 信じろ、って言われる。 安心しなくちゃいけないのに。 安心出来るのに。 信じなくちゃいけないのに。 信じられるって思うのに。 いつか裏切られるんじゃないか、って、 この背中はいつか離れていくものなんじゃないかって、 結局、また寄り添っても良い人を好きになったのか、 怖くなる。 またこの人を傷付けてしまうんじゃないか、って 自分がまた罪を犯しているような、妙な不安と高揚感に 戒めを与えなくちゃいけないのに。 こんな想いする愛なんて、 もういらない、って 思っていたのに。 手を伸ばせば届くのに、届かない。 嗚咽が止まらずに、小さい声でごめんなさい、って呟いた。 貴方を幸せにしたいのに、 私にはその術が見つからない。 離れるとか、離れないとか、そういう話じゃない。 もっと、どうしようもないほどの幸せを 貴方には感じて欲しいのに。 「…ごめん、なさい…っ」 好きになってごめん。 私なんかを好きにさせてごめん。 貴方の時間を奪ってごめん。 溢れ出す懺悔は限りなかった。 「…また、泣いてるの?」 「っ…」 遠ざかるはずの背中から心に染み渡る声が聞こえた。 それは間違いなく愛しい人のもので、 (嗚呼、また愛しいと思ってしまった) 私はそれを聞くだけで安心して、 もっと涙が溢れてくる。 「だ、って…」 「俺は、良いの」 もぞもぞとこっち側を向くと、 気だるそうな顔がにっこりと微笑んだ。 思わず泣くのを忘れてしまった私は、 つられて、少しだけ微笑んだ。 「かわいい」 首に腕を絡めて、ぎゅ、と抱きしめられた。 そういえば昨日はこんな感じで寝た気がする。 夜の雨の音に脅されて、 この腕にしがみついていた気がする。 泣き腫らした目は、可愛くなんてないだろう。 なのに、また、涙が溢れてくる。 どうしよう。どうしよう。 どうしようもないほど、この人が好きなんです。 幸せになってもらいたいのに、 一緒に幸せを探す勇気がないんです。 人を好きになる事って、 相手の一部を奪い取ってしまう事なんですか。 「こ、わい、の」 「え?」 「また、歪んだ愛に、なっちゃうんじゃ、って」 必死に一語一語を紡いだ私はこれ以上に何も言えなくて、 また貴方にしがみついて泣いた。 涙が止まらないのは、 理想と現実がかけ離れ過ぎているからなんだろう。 「愛ほどにさ、綺麗なものはないんだよ」 貴方の大きくて優しい手が、 頭をぽんぽん、と優しく撫でた。 子供をあやすように、まるで子守唄を歌うかのように。 「どんな愛も、綺麗なの」 そんなの、嘘だ。綺麗ごとだ。 そう、言ってやりたかった。 なのに今の私にはそれに縋る以外、何も見つからなくて。 息苦しさが増していく。 ああ、違うんだ。 愛に溺れたんじゃないんだ。 この人に、溺れてしまったんだ。 暖かい胸の鼓動が、 確かに伝わってくるのを感じた、午前五時三十分。 必死にかき集めた建前が、 いとも簡単に解かれていくのを感じる。 初めて人を好きになって、 それに何度気付いても忘れて。 早く、 貴方と幸せを探せたら良いのに。 PR この記事にコメントする
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